スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

京都議定書から逃げるな 目標達成に全力を  対策には経済的効果も 明日香 壽川


ここから引用:
日本経済新聞(2005年11月22日)
京都議定書から逃げるな 目標達成に全力を  対策には経済的効果も
明日香 壽川
  <前文>
                                  
 京都議定書目標を順守できなければ、日本の国際的な信頼は大きく損われる。目標未達は絶対に回避しなければならない。また、2013年以降の枠組みでは、温暖化ガスの排出削減数値目標という明確な目的とインセンティブ(誘因)を持つ京都議定書型を継続すべきである。                       



ここから引用:
 目標未達は信頼を失墜                       
                                  
 地球温暖化との関連性が懸念される気象災害が続いている。不確実性は残るものの、「予防原則に基づいた政策的判断によるリスク管理」というアプローチの必要性に対する認識は高まっている。米国も例外ではなく、カリフォルニアなどの一部の州や企業は、温暖化対策の必要性を実質的に否定しているブッシュ政権の方針と異なる対策を独自に始めつつある。  
                                  
 温暖化対策の国際的な枠組みが京都議定書であり、温暖化という巨大なリスクに対するささやかな一歩ではあるものの、国際社会にとって貴重な一歩であることに変わりはない。                   
                                  
 その議定書で規定された日本の温暖化ガス排出削減目標(1990年比マイナス6%)に関して、日本国内には目標順守は難しい、あるいは未達もやむを得ない、という議論が出ている。しかし、日本にとって目標未達というのは非常に問題がある。                    
                                  
 第一に、日本政府が議長国としてとりまとめ、日本の国会が満場一致で批准を決議した国際公約の不順守は、日本という国家および国会決議の信頼性を大きく損なう。                        
                                  
 第二に、発展途上国や米国に対して温暖化対策への「参加」を促す資格を失い、20年かけて築き上げた国際制度や信頼関係も崩壊する。たとえ不順守になっても日本の努力を国際社会が理解してくれるだろうという考えは楽観的すぎる。                         
                                  
 よく言われる「日本は省エネ大国」というのは神話の部分があり、一人当たり排出量、国内総生産(GDP)あたりの排出量、限界排出削減コストのいずれにおいても優れてはいるものの、実際には欧州連合(EU)各国とそれほど大きな差はない。社会全体としてはまだまだ省エネの余地はあり、目標達成が難しい状況にあるのは、諸外国ではすでに導入されている炭素税や排出量取引などの政策導入が日本では反対勢力によって阻止されているある。

 今必要なのは、長期的な視点の下で費用便益を比較考慮しながら効果的な国内政策と海外からの排出量購入をバランスよく実施することである。日本が議定書目標を達成できる可能性がなくなったわけではなく、目標達成に全力を傾けなければならない。                  
                                  
 今月28日からカナダで開催される第11回締約国会議において、2013年以降の枠組み、いわゆるポスト京都に関する公式な議論が初めて行われる。しかし、ほとんどの国は様子見状態であり、会議に多くを期待することはできない。そうは言っても、研究者レベルではいくつかの具体案が出ており、最大の争点は、京都タイプの枠組み、すなわち温室効果ガス排出量削減の数値目標と排出量取引の組み合わせ(キャップ・アンド・トレード)の評価である。


ここから引用:
 すべての国に段階的義務づけ                    
                                  
 京都タイプに反対する人々は一様に、革新的技術の開発、長期的取り組み、技術協力、政治的受け入れの可能性などを強調する。しかし、技術開発や技術協力は目標達成の手段にすぎず、それ自体を目標にするというのは論理が転倒している。また、長期的取り組みというのは実質的な対策先延ばしであり、途上国に対する協力も政府や企業ができることは限られている。今、求められているには社会システム全体の早急な構造改革であり、そのためには明確な目的とインセンティブとしての数値目標が必要不可欠である。                              
                                  
 では京都タイプに立脚した場合、各国の目標設定に関して、どのような具体的枠組みが考えられるだろうか。目標設定方法は結局、二酸化炭素排出という限られた「資源」の分配問題に帰着する。したがって、一人あたりの排出量や一人あたりの所得などを指標にして、すべての国に対して段階的なコミットメントの義務づけを行うのが最も公平かつ合理的だと筆者は考える。                             
                                  
 例えば、一人あたりの排出量や所得が相対的に小さい国々が属することになる第一段階のグループは、規制強化や補助金廃止などの政策措置の実施を約束させる。一人あたりの排出量も所得も中位の国々が属する第二段階のグループには、GDPあたりのエネルギー消費量、GDPあたりの温室効果ガス排出量の数値目標、あるいは特定セクターにおける数値目標などを義務づける。第三段階のグループは、一人あたりの排出量も所得も大きい欧米諸国と日本であり、絶対量の削減を伴った国全体の数値目標を持たせる。そして経済成長によって一人あたりの排出量などがある一定の値 
を超えた場合、次の段階に移行する。このような枠組みはマルチ・ステージ・アプローチと呼ばれており、EU委員会や多くの研究者から指示されている。                              
                                  
 いずれにしろ、温暖化による洪水や干ばつなどの被害をより大きく受けると予想されるのは南に位置する途上国の人々であることも考慮しながら冷静に状況を判断すれば、例えば一人あたりの排出量は小さい(米国の7の1以下)ものの、人口が多いために国全体の排出量は大きい中国やインドは、第一段階あるいは第二段階のグループとしての約束を追及することが現実的であり、先進国と同様の排出削減目標を持つべきだというのは公平性の視点を欠いた議論である。                  
                                  
 ブッシュ後も想定して対応                     
                                  
 温暖化問題において難しいのは、電気のない生活をしている人が約16億人もいる途上国の人々に対して、先進国の人々と同じようにエネルギーを使うことは将来許されなくなる、と言わなければならないことと、そのエネルギーを一人あたりで世界平均の約2倍(途上国平均の約5倍)以上も使っていて、かつそのようなライフスタイルこそが理想だと考えている先進国の人々に温暖化ガスという汚染物質の大量排出者としての「加害者意識」を持たせなければならないことである。             
                                  
 根本的な解決は容易でないものの、現時点では、少なくとも以下の行動が重要だろう。
                                  
 第一は、途上国や米国の「不参加」や国際競争力への影響を理由に、日本やEUが京都議定書の目標達成の手綱を緩めたり、将来の枠組みにおける自らの削減義務の軽減を主張したりしないことである。        
                                  
 第二は、温暖化対策においてフリーライダー(ただ乗り)である国に対する何らかの貿易措置を検討することである。例えば、現在とは逆の立場であるが、米国のクリントン政権が議会に提出したエネルギー税法案(発生熱量に応じて広範なエネルギー源に課税)には、国際競争力低下の回避策として国境調整税の導入が含まれていた(議会の反対が強く、エネルギー税導入は断念)。                         
                                  
 米国に対しては、不断に京都議定書への参加を促していかなければならない。たとえ石油業界が大きな支持基盤である現ブッシュ政権に大きな変化は期待できないとしても、ブッシュ後の政権が異なる政策を打ち出しやすくするために、日本およびEUが積極的な対策を行うべきである。逆に日本とEUが、今の米国に引きずられて温暖化対策を退化させてしまったら、ブッシュ政権の現在の不十分な温暖化政策の正当性を国際社会が認めてしまったことになり、ブッシュ政権の政策変更やブッシュ後の政権が強い政策を出すことは困難になる。

 昨今の石油価格高騰で膨大な利益を得たのは産油国と石油会社であり、例えば米エクソンモービルの今年7-9月期の純利益は1.1兆円を超え四半期では過去最高となった。極めて単純に言えば、温暖化対策によって省エネを進めることは、エネルギーの需要者であり購買者である私たちから彼らへの資金移転を止めることである(それを防ぐために、彼らは温暖 
化対策の意義を否定し続けている)。                 
                                  
 言うまでもなく、省エネや新エネの普及によるエネルギー安全保障面への貢献は大きい。また、省エネが進んだ社会というのは、例えばトヨタ自動車のプリウスが世界中で爆発的に売れている社会である。そのような状況が日本経済に与える効果は決してマイナスだけではないはずである。
関連記事


Comment

(編集・削除用)
管理者にだけ表示を許可

Trackback

URL
http://chikyuondanka1.blog21.fc2.com/tb.php/152-b8854297
この記事にトラックバック(FC2Blog User)
Copyright © chikyuondanka
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。