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地球環境問題と科学者の使命 御園生 誠


ここから引用:
地球環境問題と科学者の使命

御園生 誠 *

 科学・技術が社会に与える影響は,地球温暖化の問題の場合,とりわけ大きくなっています.そこで,この問題を取り上げ,科学者の果たすべき役割について考えます.
 昨年12月,地球温暖化防止のため,第15回気候変動枠組条約締結国会議(COP15)が皮肉にも厳寒のコペンハーゲンで開催され,各国の利害をかけた緊迫した駆け引きの末,結局,合意が得られませんでした.その議論の基礎となったのが科学者の集まる気候温暖化に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change : IPCC)の報告です.本来,この報告書は既存の知見を科学的に整理したもので,政策的提案を含んでいないのですが,いつの間にか,国際政治とマスメディアのダイナミクスの中で変質し,大きな政治経済的影響力を発揮するようになっています.実は,IPCC報告には,21世紀末の気温上昇を2℃以下にすべきだとか,2050年に二酸化炭素排出を半減すべきだとは書いてないのです.
 地球温暖化を実感するとか,温暖化のために南洋の島が沈むとか,は明らかな誤解です(地球平均の気温上昇は約0.01℃/年,海水面上昇は約2mm/年で毎日・毎年の変化よりはるかに小さいのです).また,将来に関するシミュレーションの基礎となる科学はまだ確実性が低いうえ,最近のクライメートゲート事件やヒマラヤ氷河事件などによりIPCC報告書自身の信頼性が揺らいでいます.このように正しい認識を欠いたまま形成されている世論を正すことは科学者の第一の責務ではないでしょうか.
 次に,温暖化防止対策における科学・技術の出番ですが,新エネルギー(新・再生可能エネルギー)を導入し,電気自動車を走らせれば,すぐにでも脱化石資源が実現できると思うとしたらそれは幻想です.量的関係と時間軸が間違っています.今のところ,これらエネルギーは量的にわずか.そのうえ,高価で,二酸化炭素の削減効果も小さいのです.世界の発電量が風力>地熱>太陽光で,これらを合わせても全エネルギーの1%程度だということをご存知でしょうか.化石エネルギーが80%,残りは,在来型バイオマス(薪〔まき〕など)(約10%),原子力(6%),水力(2%)です.今は,焦って新エネルギーを大量に普及させるのではなく,技術革新に努め,優れた技術を育ててから,21世紀後半の普及を目指すべきだと考えます(拙著『新エネ幻想』).
 不確実性が高い中で可能な限りの科学的な予測をもとに妥当な対策を講じ(過剰な対策も危険),効果をモニターしながら対策を柔軟に修正することが大事です.このような作業に科学者が大いに力を貸すべきです.ところが,科学者の中でさえ,利益誘導や付和雷同の風潮,体制にすり寄る傾向がみられます.今こそ,科学者は,胸に手をあて「科学の基本倫理」(科学・技術のあり方)を真摯〔しんし〕に考え行動すべきです.そうしないと,世界も国も道を誤ることになります.
 科学者の役割をまとめると,まず,現実の認識と対策に関する判断基準を社会に提示して,社会に正しい判断を促すことです.宇宙船地球号が正しい方向へ進むよう,科学者は力を合わせ羅針盤の役を果たすべきではないでしょうか.そして,その方向に向け,それぞれの専門性を生かして科学技術イノベーションの創出に力を尽くすべきだと考えます.

*東京大学名誉教授,日本化学連合会長

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