温暖化は稲作にとって脅威とは言えない。作況指数と温暖化事例研究

1)山形県災害年表 http://www.yynosai.or.jp/nosai/databook/databook-nenpyo.html これを例にとり、温暖化と寒冷化の作況指数との関係を考察し推定する。
2)作況指数は、10a当たり収量/10a当たり平均収量×100 という計算式によって求められる。 区分は以下のとおりである。
 良 作況指数106以上
 やや良 同102~105
 平年並み 同99~101
 やや不良 同95~98
 不良 同 94~91
 著しい不良 同90以下


3)作況指数98以下(やや不良、不良、著しい不良)の年を青、102-105(やや良)を薄いピンク、106以上(良)をピンクでハイライトした。
4)温暖化に関係すると思われる項目の文字色を暖色にした。 5)寒冷化に関係すると思われる項目の文字色を寒色にした。

山形県災害年表

年度 西暦 作況指数 収量(Kg) おもな被害等
24 1949 102 352 異常低温暖冬寡雪、キティ台風、ツマグロヨコバエ異常発生
23 1948 120 407 降雹、アイオン・リビー台風
24 1949 102 352 異常低温暖冬寡雪、キティ台風、ツマグロヨコバエ異常発生
25 1950 107 366 庄内いもち病大発生寡雪突風、融雪洪水
26 1951 99 344 寡雪、大干ばつ、温海温泉大火
27 1952 106 370 異常低温、豪雨、湯野浜大火、ジェーン台風、晩霜
28 1953 97 351 甚冷、豪雨、台風13号、9月低温
29 1954 113 412 ヒメハモグリバエ、ツマグロヨコバエ異常発生
30 1955 127 461 庄内・置賜稲青虫大発生、県南大雪異常高温、カラ梅雨
31 1956 116 436 異常高温、大干ばつ、暖冬寡雪
32 1957 118 456 暴風、地震
33 1958 104 438 村山地方干ばつ、台風21号、異常高温、暖冬寡雪
34 1959 105 460 伊勢湾台風、暖冬寡雪大降雹
35 1960 109 487  
36 1961 105 475 飽海地方豪雨、大雪、台風18・24号
37 1962 102 471 異常高温、置賜干ばつ
38 1963 102 476 最上地方・飽海地方豪雨
39 1964 104 487 干ばつ、新潟地震、豪雨
40 1965 104 496 雷、降雹、豪雨、台風24号
41 1966 107 514 台風4号、豪雨
42 1967 118 567 羽越豪雨
43 1968 112 569  
44 1969 102 532 大雪、晩霜、豪雨
45 1970 108 577 干ばつ、豪雨、大雪
46 1971 90 500 異常低温高温寡照、庄内集中豪雨
47 1972 95 529 低温、水害、いもち病発生、晩霜、台風20号
48 1973 103 563 降雹、寡雨干ばつ
49 1974 103 566 鳥海山噴火、大蔵村赤松で山崩、豪雪、異常低温、大雨
50 1975 112 612 県北豪雨、雷雨降雹、寡雨干ばつ
51 1976 92 511 異常低温、冷夏、いもち病、酒田大火
52 1977 104 581 異常低温、冷害、いもち病
53 1978 104 579 宮城沖地震、少雨干ばつ
54 1979 98 548 強風、降雹、台風16・20号
55 1980 97 546 異常低温、冷害、大雪
56 1981 92 525 異常低温、冷害、風水害、凍霜害、降雹、台風15号
57 1982 97 553 冷害、降雹、大雨
58 1983 102 582 日本海中部地震、大雨、
59 1984 107 608 干ばつ、大雪
60 1985 107 613 降霜、降雹、強風、異常高温
61 1986 105 604 大雨
62 1987 104 600 暖冬降霜、異常乾燥、大雨
63 1988 92 536 異常低温、冷害、いもち病、降雹、台風
平成元 1989 99 579 少雨、台風13・17号
2 1990 100 582 フェーン
3 1991 94 547 いもち病、風水害、降霜、長雨、台風19号
4 1992 99 576 品質低下
5 1993 79 459 7・8月低温・寡照、冷害、いもち病、
6 1994 105 615 7・8月低温・寡照、いもち病
7 1995 92 534 いもち病、風水害
8 1996 102 596 冷害、風水害
9 1997 103 595 風水害、冷害
10 1998 101 583 いもち病、冷害
11 1999 103 602 いもち病、風水害
12 2000 105 616 フェーン、ジャガイモヒゲナガアブラムシ
13 2001 102 601 豪雪
14 2002 101 600 台風21号
15 2003 92 547 冷害  
16 2004 95 576 台風、風水害、(潮風害) 
17 2005 101 599 豪雪、降雹
18 2006 99 588 7月長雨・寡照
19 2007 101 594 5月低温・寡照
20 2008 104 617  


6)青でハイライトした年、作況指数98以下(やや不良、不良、著しい不良)だけ抜き出してみる ほとんどが冷害または低温による被害だということがわかる。
年度 西暦 作況指数 収量(Kg) おもな被害等
28 1953 97 351 甚冷、豪雨、台風13号、9月低温
46 1971 90 500 異常低温高温寡照、庄内集中豪雨
47 1972 95 529 低温、水害、いもち病発生、晩霜、台風20号
51 1976 92 511 異常低温、冷夏、いもち病、酒田大火
54 1979 98 548 強風、降雹、台風16・20号
55 1980 97 546 異常低温、冷害、大雪
56 1981 92 525 異常低温、冷害、風水害、凍霜害、降雹、台風15号
57 1982 97 553 冷害、降雹、大雨
63 1988 92 536 異常低温、冷害、いもち病、降雹、台風
3 1991 94 547 いもち病、風水害、降霜、長雨、台風19号
5 1993 79 459 7・8月低温・寡照、冷害、いもち病、
7 1995 92 534 いもち病、風水害
15 2003 92 547 冷害  
16 2004 95 576 台風、風水害、(潮風害) 


7)今度は、温暖化に関係のあると思われる暖冬寡雪高温異常高温暖冬フェーン等を抜き出してみる。 一件の例外を除いて、作況指数は平年並み(99)以上である。その一件も、異常低温と高温がある例外的な年である。
年度 西暦 作況指数 収量(Kg) おもな被害等
24 1949 102 352 異常低温・暖冬寡雪、キティ台風、ツマグロヨコバエ異常発生
24 1949 102 352 異常低温暖冬寡雪、キティ台風、ツマグロヨコバエ異常発生
25 1950 107 366 庄内いもち病大発生寡雪突風、融雪洪水
26 1951 99 344 寡雪、大干ばつ、温海温泉大火
30 1955 127 461 庄内・置賜稲青虫大発生、県南大雪異常高温、カラ梅雨
31 1956 116 436 異常高温、大干ばつ、暖冬寡雪
33 1958 104 438 村山地方干ばつ、台風21号、異常高温、暖冬寡雪
34 1959 105 460 伊勢湾台風、暖冬寡雪大降雹
37 1962 102 471 異常高温、置賜干ばつ
46 1971 90 500 異常低温高温寡照、庄内集中豪雨
60 1985 107 613 降霜、降雹、強風、異常高温
62 1987 104 600 暖冬降霜、異常乾燥、大雨
2 1990 100 582 フェーン
12 2000 105 616 フェーン、ジャガイモヒゲナガアブラムシ

結論:
1)温暖化は稲作にとって脅威とは言えない。
2)寒冷化こそ稲作の脅威である。
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Comment

2010.08.12 Thu 01:01  |  

やはり東北より温暖な西日本だと高温障害が出始めたりしているようですね。品種改良や変更である程度対応可能とはいえ、育てる人にとってはいろいろ変化もありますしねぇ。

さて、最近出た以下の記事だと、"rising temperatures during the last 25 years have already cut the rice yield growth rate by 10 percent to 20 percent in several parts of Asia."なんて言ってますね。やはり暑いところは厳しいんでしょうか。

http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/08/09/AR2010080906225.html

  • #-
  • ESD
  • URL

2010.08.11 Wed 11:29  |  

「農業と温暖化」ではなく「農業と気候変動」で考えた方が良いですね。実際に農業をやったことがない、あるいは農家の方にお話を聞いたことがないのかもしれませんが、農業では気候変動はこの10年ぐらい非常に深刻な問題になっています。

具体的には気候変動により
・気温の高い時期・低い時期が変わる
・日照・降雨パターンが変わる
・温度帯がずれることで栽培適地が変わる
・高温が続くことで品質が低下する
などの問題が西日本を中心に作物・産地を問わず発生しています(*:問題の大きさはバラバラです)。

今の気候変動防止が最優先、気候変動の主因は人為的な温室効果ガスの増加だ、という風潮に反対されるのは個々の判断だと思いますが、現実に気候変動により負の影響を受けていることまで「そんなことはない」としてしまうのは行き過ぎだと思います。

  • #mQop/nM.
  • ねこ
  • URL
  • Edit

2010.08.10 Tue 00:53  |  

東北は米栽培のほとんど北限みたいなところなので、そりゃ冷害の方が影響が大きいのは当たり前です。日本では北の方が何故か米所になっているので、日本一国で見れば高温よりも冷害の方がより恐れるべきである、というのは、結論としては有りでしょう。九州などの稲作農家にはまた別の言い分もあるでしょうし、そこに目が行っていないのは不十分だと思いますが。

ただし、さらに欠けている視点があります。温暖化もとい気候変動はしばしば降雨パターンの変化ももたらすのですが、たとえば台風や大雨被害の変化は考慮されていないこと。また世界全体でたとえばタイのような米輸出国の変化まで捉えた上で稲作を語っているわけではないということです。

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